日田市の皆さんと作り上げた“もぎたて”のおいしさ【TOCHIとCRAFT「おおいた日田の梨ソーダ」篇】
ただ素材を使うだけでなく、地域と連携し、生産者の想いやその土地が持つ文化も伝えていく「TOCHIとCRAFT」。22年8月下旬に発売した『おおいた日田の梨ソーダ』もそのひとつです。
日田市や、生産者との取り組みの中で生まれた”瞬間”の味わいの裏側について、ブランド担当、研究開発担当、そして支援してくださった行政の方に伺いました。
”日田梨”の魅力
まずは、「日田梨」の魅力を探るべく、日田市役所の重田さんにお話を聞きました。
重田さん:大分県の西部に位置する日田市は、豊かな水が流れる盆地や緑あふれる森林、丘陵地でできています。寒暖の差が大きく、雨量も多いため、四季の移ろいがはっきりしていることも特徴です。
夏は日本一になることもあるくらい暑く、冬はとても寒い。辛いなと感じることもある気候ですが、そのおかげで美味しいフルーツができています。
そんな日田の地で100年以上の歴史を持つ日田梨は、筑後川源流の清らかな水とこだわりの土から作られ、みずみずしさと糖度の高さは国内外で高い評価をいただいています。品質管理も徹底し、厳選された梨を出荷しています。
日田梨の魅力は、「おいしい!」というのはもちろんのこと、長い期間、四季を通して様々な品種を楽しめるところです。ちょっとずつ味や食感が異なりますので、ピンポイントで「この品種だけがおいしい」というのではなく、1年を通して様々な味わいに触れることができます。
次に、日田梨の生産者さんとの取り組みについて、米倉さんと西垣内さんにお話を聞きました。
”日田梨”のおいしさを広めたい
米倉:ポッカサッポロと日田市の取り組みが始まったのは、日田市に工場をもつサッポロビール社を通じて、日田市役所の方から“日田梨”をご紹介いただいたことがきっかけです。梨といえば千葉や鳥取など大きな産地があるなかで、大分の収穫量はあまり多くはありません。ただ、厳選し出荷される日田梨のおいしさは格別でした。だからこそ、私たちが日田梨のおいしさを広めるお手伝いがしたいと思いました。
2017年に前身である『日田の梨(280mlボトル)』を発売。2019年には炭酸飲料の『日田の梨ソーダ』を、2020年には『おおいた日田の梨ソーダ』へとリニューアルし、より多くのお客様に手に取っていただけるよう形を変えながら販売してきました。
”もぎたて”の香りを求めて「香りの現地調査」へ
米倉:『おおいた日田の梨ソーダ』のリニューアルにあたっては、コンセプトを改めて考え直すことから始めました。
TOCHIとCRAFTシリーズはトチの人々との一緒づくりやその土地ならではのおいしさの表現にこだわっています。だからこそ、地元の人々だけが知る、特別なおいしさ「もぎたての香り」を飲料で表現しようと考えました。
当時日田では10種類の梨が栽培されていましたが、「四季を通して日田の梨」のうたい文句のとおり、収穫期も果実の特徴も様々です。そこで、香りの良い品種を市役所やJAの方に尋ねたところ「新高(にいたか)」をおすすめいただいたので、収穫時期にあわせて日田市の生産地に向かいました。
西垣内:私と米倉さん、香料のパートナー企業の研究者で訪問し、2泊3日で「香りの現地調査」を行いました。
まずは現地だからこその新鮮なおいしさを調査するため、農家の方にご協力いただき、木になっている梨を採って、その場で食べ、そのおいしさを味わいつつ、香り、食感の違いなどを確かめていきました。その際に新高以外の品種も食べ比べさせていただいたり、後から持ち帰った梨を改めて食べてみたのですが、種類や食べるタイミングの違いによって特徴があって驚きましたね。
米倉:私ももぎたての梨を食べたのは初めてでしたが、想像していた以上に違いがありましたね。もぎたての梨は、より食感がしっかりとあって、かじった時に果汁がバッと出てきて、すごくみずみずしかったです。香りも非常にさっぱりとしていて、フレッシュってこういうことなのだと驚きました。
香りの現地調査では、もぎたての香りを追求するために、梨畑を丸2日間お借りしました。
梨畑では、ふだん食べる時のような状態の梨はもちろん、枝に実ったままの梨、すりおろした梨、果汁など、様々な状態の梨の香りを専用収集機で集めたり……、あらゆる手法で香りの調査を行いました。実際の梨畑だからこそできる調査でしたね。
もぎたての香りは“瞬間”のことなので、感覚だけの曖昧な記憶にしないことも大切です。そこで、香りや味を言語化しました。「こういう味だ」というのをなるべく言葉で表現するんです。「今までのイメージとここが違うね」ということや「こういう味だね」ということを、時には抽象的な言葉を使って表現しました。こうしておくことで、飲料にしたときに、「この部分はこの言葉だね」と評価しやすくなります。
西垣内:香りの現地調査では、たくさんの梨を収穫させていただいたのですが、その場で切り方や果実の部位によって味が変わることを教えてくださいました。また、収集の時には、木になっている状態で一部だけカットさせていただいたり……。
調査のためとはいえ無茶なお願いをさせていただいたにも関わらず、どんなことにも「いいよ」と言ってくださって本当にありがたかったですね。今思い返しても、農家の方々は本当に快く私たちを迎え入れてくださいました。
もぎたての味と香りを商品へ
西垣内:現地調査を終えてからは、試作、改良の繰り返しでした。現地で実際に味わったからこそ表現できる“もぎたての香り・味”を再現するためにはどうすればよいのだろうか。何度も悩みながら開発していきました。
試作品の数もすごいことになりましたね。何本も作っては米倉さんに試飲してもらって感想を受けて……を繰り返して作り込みました。
米倉:自分たちが「目指していたのはこういう味」と感じられる目標の味に到達するまで、香料のパートナー企業の研究者を交えてディスカッションを重ねました。
西垣内:ここに至るまでに日田市の方々の力をたくさんお借りしただけでなく、すでに評価いただいていた商品のリニューアルを手掛けるということもあり、とにかくプレッシャーとの戦いの日々でしたね。
米倉:納得のいく試作品ができたタイミングで、農家の方に味覚の確認をお願いしました。リニューアル前の日田の梨ソーダは芳醇な香りや甘みの強さを評価いただいていたので、そこから大きく味覚を変えることへの怖さは私にもありましたね……。
緊張のなかで迎えた農家さんの試飲では、「おいしいですね」「爽やかな甘みになりましたね」と気に入っていただきました。自分たちがこだわった部分を評価していただけたので、すごくうれしかったです。
地元の方の想いを受け止め、おいしさを育てていきたい
米倉: 2022年の『おおいた日田の梨ソーダ』発売時には、地元スーパーのバイヤーさんが、「ポッカサッポロさん、今年も販売するんだね!」と喜んでくださったと聞いています。地元の方々が覚えていてくださり、楽しみにしてくださっているのは気が引き締まりますね。
『おおいた日田の梨ソーダ』は、地元の方々を巻き込んで作り上げた飲料であり、自分たちだけではない多くの方々の想いが詰まっています。
魅力の数々や地元の方の想いを自分の言葉で発信しながら日田梨のブランドイメージを守り、TOCHIとCRAFTのひとつとして育んでいきたいです。
西垣内:TOCHIとCRAFTは、地元の方々と協力して一つの商品を作り上げていくブランドです。そのなかで『おおいた日田の梨ソーダ』が長く続いていって欲しいからこそ、これからも地元の声に耳を傾け、自分たちだけではない多くの人の想いも受け止めながら、より良いおいしさへ育ってくれたらいいなと私は思います。
地元を大切にしたいという日田市の皆さんの想い、そして、どんな時も温かく応じてくださった生産者の方のご協力のなかで『おおいた日田の梨ソーダ』は育ってきました。
私たちポッカサッポロは、感謝の気持ちとともにこれからも、日田市や日田梨の生産者の方々のお役に立てるような取り組みを続けていきます。