「人と向き合い、地域とつながることを大事に」社長が語る、これからのポッカサッポロ
皆さんは、ポッカサッポロの商品と聞いて何を思い浮かべますか? 100%のレモン果汁だったり、あたたかい缶コーヒーだったり、ちょっぴり意外性のある飲みものだったり……
どれも今となっては“あたりまえ”にそこにあるものですが、“世の中にない”ところから始まった商品もたくさんあります。
ポッカサッポロがさまざまな商品を通して、どんな未来を思い描いているのか。2022年4月に刷新された経営ビジョンに込めた想いを征矢社長に聞きました。
殻を破って、新しい未来を築くために
ポッカサッポロフード&ビバレッジは、2013年にポッカコーポレーションとサッポロ飲料が統合してスタートしました。ポッカは「ポッカレモン100」を有するレモン果汁のパイオニアであり、サッポロ飲料にはサッポログループの開拓者スピリッツが受け継がれていました。
当時、飲料食品業界で競合だった2社が統合するわけですから、ポッカサッポロとしてひとつの会社を創り上げるのは相当難しい話ですよね。そこで私は統合プロジェクトのリーダーとして、両社の生い立ちと強みを活かし、2社をひとつにするための経営ビジョンを策定しました。
その経営ビジョンは社員にも愛され、これまで足並みをそろえて事業を推進するのに役立ちましたが、時が経つにつれ、社会の状況やお客様の生活スタイル、価値観が大きく変化していきました。まさに、予測できない時代。私たちが社会やお客様に必要とされる企業であり続けるには、この先の未来を目指すビジョンでなければならない。古い殻を破り、どういう未来を築くのかを定義することが大事だと考え、経営ビジョンを刷新することにしたのです。
人と社会と向き合い、未来の食のあたりまえを創造する
新しい理念体系は、上の図のように理念・ビジョン・行動指針の3つで構成しています。理念を「私たちの使命」とし、ポッカサッポログループが社会に存在する意義を提示。その使命を果たすべく、節目である2030年に向けて人と社会にどう貢献するのかというビジョンを「私たちのありたい姿」として描き、社員が同じ価値観を持って仕事に向き合うスタンスとなる行動指針を「私たちの約束」としました。
この3つを定義し、持続的に会社が成長していくことの柱として『人と社会と向き合い、未来の食のあたりまえを創造する』という使命を掲げました。
会社というのは人で成り立っているものです。私たちが商売をしていけるのも、生産者の方や商品を買ってくださるお客様などたくさんの人に支えていただいているからこそ。ポッカサッポロは食の会社だからこそ、何よりも人と人とのつながりを大事にしたい。そして、社会に対しても、使命感を持ってさまざまな課題に取り組むことで会社として認められていきたい。
人と社会に向き合わないと自分よがりになってしまいますから、そこを一番大事にしたいという想いを使命に込めました。
地域とつながり、おいしい以上の価値を
「私たちのありたい姿」についてポッカサッポロでは、レモンをはじめ植物性素材を中心に「おいしい以上の価値」を届けることを掲げています。「おいしい以上の価値」にはいろいろな見方がありますが、私たちは食の会社として原料である農作物の生産地や生産者とのつながりが大切だと考えています。
たとえばひとつの商品を作るときにも、そこに至るまでの道のり、いわゆるストーリーが大事になります。この商品は、どのような場所で、どのような人々が、どんな想いで生み出していったのかという事まで、お客様にお伝えしたい。そんな想いを持っています。
ポッカサッポロには地域発の商品が数多くありますが、常に地域と人を巻き込んで作り上げていく姿勢でいます。産地に足を運び、その地域や生産者の方々のやりたいこと、言いたいことをしっかり聞き取る。そうすることで、商品にストーリーが宿り、それがお客様へのおいしい以上の価値になるのではと考えます。
食を通じ、地域とのつながりを持つことの大切さ。それに気づかせてくれた原体験になったのは夕張市と行った取り組みの数々でした。
育ててくれたご恩をお返ししたい
夕張市が財政破綻に見舞われたのは2007年のことでした。私が当時在籍していたサッポロビールは名前に冠するとおり、北海道で生まれ、北海道の人たちに育ててもらった会社です。夕張市のこの出来事は、私たちに「本当に地元に寄り添ってきたのだろうか?」「育ててくれたご恩を返せているのだろうか?」と見つめ直すきっかけとなり、サッポロビールとして『ふるさとのために、何ができるだろう?』という取り組みにつながっていきました。
取り組みが始まった当初私は東京にいましたが、しばらくして北海道に赴任することになりました。北海道に来て、最初に訪ねたのが夕張だったのですが、破綻した町並みを目の当たりにして、自分たちの恩返しがまだまだ足りないことを痛感させられたのです。
何かできないのか?と思っていたところに、サッポロ飲料から「Ribbon夕張メロンソーダ」の企画が舞い込んできました。夕張メロンの果汁は量も限定されている希少な素材ですし、夕張市農業協同組合(以下、JA夕張市)はそれまでの関係先を大切にされていましたので、最初、商品化は難しい状況でした。しかし、是非とも実現したいと思い、サッポロ飲料と一緒に「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」のスポンサーを機につながりのあった方々に相談したところ、夕張市役所の方を紹介してくださったり、一緒にJA夕張市へ行って説明してくださり、最終的には「夕張メロンソーダで、夕張を盛り上げていきましょう」と話がまとまりました。商品化できたのは、本当に皆さんのおかげでした。
その後、JA夕張市と信頼関係を築きながら、北海道夕張メロンソーダ10周年の記念に、これまでの感謝の意味も込めて夕張メロンの初競りにも参加させていただきました。2玉500万円で落札したのは、すごい反響でしたね。流通の方にも改めて夕張メロンの価値を見直していただくことができたので、少しはお役に立てたかな……と思っています。
ここで、征矢社長とともに夕張市の厚谷市長を訪問させていただき、当時のことなどお話を伺いました。
厚谷夕張市長が語る、
「夕張メロン」は私たちのプライド
厚谷市長:夕張市にとって夕張メロンとは、宝であり、プライドそのもの。私たちが一番守っていかなければならないものです。ポッカサッポロさんはそんな夕張メロンの研究をずっと続けてこられて、芳醇な香りまで大切に表現してくださっています。
夕張メロンは現在、北海道を中心に関東圏などにも出荷されていますが、どこの売り場にもあるというわけではありません。だからこそ商品化することは、全国の人に夕張メロンを愛していただき、食べてみたいと思っていただけるきっかけになるということなんですよね。効果はとても大きいと感じています。初競りのときも、市場に足を運び立ち会いました。光栄な価格と評価をいただき、震えが来たのを今でも鮮明に覚えています。
商品になることで、何よりも生産者の皆さんが喜ばれ、後押しになっています。ですから、ポッカサッポロさんにはこれからもずっと取り組みを続けていただきたいというのが一番の思いです。
寄り添い、新しい価値を捉えていく
私たちはこれまでも、「今ではあたりまえ」の商品やサービスを生み出してきた自負があります。しかし、道のりは決して平坦ではなく、新しいものであるがゆえに発売当初「なんだこれは?」といわれた商品もありました。ですが、商品というものは多くのお客様に飲んだり食べたりしていただくことで、あたりまえの存在になっていくものなんですよね。そこまで来て初めて“商品になる“ということだと私は思っています。
皆さんの生活の中ではすでにあたりまえになっている、あたたかい缶コーヒーも冷たい缶コーヒーも買える自動販売機や、お店で飲むようなスープが家でも味わえる缶入りスープも、かつてはあたりまえのことではありませんでした。ポッカサッポロには、そういう文化がない時代にやってみようと成し遂げてきた商品がたくさんあります。
そんな未来の食のあたりまえを、もう一度しっかりと腰を据えてやっていきたい。原点に立ち返る思いが「私たちの使命」にも込められています。
食の世界には新しい価値を捉える隙間が、実はまだまだたくさんあります。「TOCHIとCRAFT」シリーズのような地域発の商品も、その土地を知らない人にこそ飲んでいただきたい、そして地域のことを知ってほしいという発想から誕生しました。
ただ商品を作るだけではなく、地域とつながり、寄り添っていくことで、未来の食のあたりまえはもっと切り拓いていけると思います。
人と向き合い、地域とつながり、新しい価値を形にする。旧ポッカコーポレーション創業者の谷田さんの教えのひとつに“ヒラメキと思いつきは違う”という言葉がありますが、ヒラメキで一番大事なことは、予測できない時代を見極めること。ポッカサッポロはこれからも、粘り強く、あきらめないことを大切に、人々の生活を楽しく豊かにする「未来の食のあたりまえ」をお届けしていきたいと思います。