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ゼロからの挑戦【「SOYBIO豆乳ヨーグルト」開発秘話編】

クセのないまろやかな味にこだわった「SOYBIO(ソイビオ)豆乳ヨーグルト」。(以下SOYBIO)発売当初は小型容器のみでしたが、たくさんの人に食べてほしいという想いから大型容器の開発をスタートし、同時に豆乳ヨーグルト製造ラインのための自社工場の立ち上げが決まりました。
しかし、どちらもポッカサッポロにとっては全く新しい取り組みで、前例のないこと。手探り状態の中でどう商品開発に向き合っていったのか、開発担当者の浅井さんに話を聞きました。

浅井 麻佑子
ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社 レモン・プランツミルク事業本部 レモン・プランツミルク研究所 プランツミルク開発グループ

2015年入社。レモン飲料の商品開発担当を経て、2018年に現在の部署に異動。豆乳ヨーグルトの開発をはじめ、その他新商品の開発や原料に関する食品表示作成を担当している。

ゼロからのスタート


私が豆乳ヨーグルト開発チームへ異動してきたのは、入社4年目を迎える時でした。当時担当していたレモン商品の開発を続けたいという気持ちもありましたが、新規事業に携わることで、自分にしかできない新しい仕事ができるかもしれないと思いました。
しかし、豆乳ヨーグルトの開発は、会社としても私自身も全く知見のない分野。まずは何をすべきか考え、乳酸菌に関する文献を読んだり、乳業メーカー主催のセミナーに参加したりと発酵の知識や乳酸菌について学ぶことから始めました。本当に、ゼロから知識を得ていく感じでしたね。
 
次に考えなければならなかったのは「どのような豆乳ヨーグルトを作るか」ということでした。豆乳ヨーグルトは競合品が少なかったため、絶対においしいという味がわからず、とにかくいろんな種類のヨーグルトを食べたり、豆乳飲料を飲んだりしました。その結果たどり着いたのが、ヨーグルトのおいしさには「さわやかな酸味」と「なめらかな食感」が大切だということだったのです。
 
ただ、一方で豆乳というと、飲みにくさと青臭さを苦手に感じる人も多くて……。「SOYBIO」をもっと多くの人に手に取ってもらうためには、乳製品のヨーグルトからのチェンジを狙っていかなければなりません。そこで、クセがなく食べやすい豆乳ヨーグルトの開発にもこだわりました。

いざ開発を始めてみたものの、豆乳ヨーグルトは常温で保存するドライ商品とは違い、冷蔵で保存するチルド商品ということも開発にあたっての難しさのひとつでした。試作品の日持ちがしないため、計画的かつスピーディーに味の評価をしなければならないんですよね。サンプル品の対応も速やかにできるよう、スケジュール管理を徹底する必要もありました。

消費者調査で突きつけられた厳しい評価


新商品発売まで一年を切っていたところで、いよいよ「SOYBIO」の消費者調査をすることになりました。これまで何度も試作や改良を重ねてきていたので、おいしさは極められたのかなと手応えを感じていました。
ところが、結果は惨敗。こだわっていた「なめらかさ」の評価が低く、社内からも「ザラザラしている」という厳しい声が上がったのです。豆乳ヨーグルトを食べたことのない人がほとんどだったので、乳製品のヨーグルトと比べると違和感があったのだと思います。あの時は本当に悔しい気持ちでいっぱいになりましたね。
 
発売日が目前に迫り、もはや配合を変えられるようなタイミングではありませんでした。しかし、「SOYBIO」をポッカサッポロの主力商品としていくためには「これでは、ダメだ」と。完成度を高めるためにも改めてチームで一致団結して、さらなる食感の改良へと動き出しました。

失敗さえもポジティブに、進み続けた日々


食感を改良するにあたって、原料の比率や種類を見直しました。「SOYBIO」のような無糖タイプのヨーグルトは配合がシンプルなため、原料のバランスを少し変えるだけで食感のバランスが変わってしまいます。また、植物性食品というコンセプト上、使える原料も限られていたことが非常に難しくもありました。

どうしたら配合バランスを整えられるだろう。何度も検証し、なめらかな食感やほどよい酸味を出すために、乳酸菌を中心とした原料選定にもこだわりました。ただ、乳酸菌の発酵というのは生き物のようなもので、同じ配合でも昨日と今日で結果が違ってくることもあり、再現性を取ることにも苦労しましたね。
 
課題は配合の見直しだけではありませんでした。商品化するためには、“自社工場でつくる”ことも前提としなければなりません。
大型の「SOYBIO」は容器に充填してから発酵させる“後発酵”という製法を取りましたが、当時の私には“後発酵”の知見がなく、肝心の自社工場さえもまだ完成していなかったのです。
 
そのため、実際の工場をイメージしながら、試作と検証を行いました。実際に使用する機械の情報や、文献やセミナーで学んだ内容から想像を広げていくしかなく……自分の見解が本当に正しいのか悩むことは多かったです。
だからこそ、工場で起こりうるトラブルを考え、あらゆる可能性を探りました。成功と失敗を繰り返す日々でしたが、すべてが大事な結果。どんな結果になっても知見を得ることができたので、失敗さえも面白みを持って向き合っていましたね。

工場ラインテストにて思わぬトラブル発生


ついに工場が完成し、ラインテストでの検証が始まったものの大きなトラブルが発生。発酵が途中で止まってしまい、ヨーグルトができない事態が起こってしまったのです。スケジュールに余裕は無く、失敗は許されないタイミングでのトラブルでした。社内からの期待も高い中で、何としても出荷しなければ!と焦りました。でも、開発担当者として妥協をしたくなかった。「SOYBIO」を大型容器としてゼロの状態から作り上げ、数多くの知見を溜めてきたこともあり、自然と思い入れが強くなっていたんですね。「これは発売に向けての最後の壁なんだ」と前向きに取り組んでいきました
 
トラブルの対応には、工場のメンバーにも協力してもらいました。原因が原料にあるのか発酵にあるのかを探るため、研究所での試作時と工場での製造時で何が異なるかを洗い出しました。とにかく時間がなかったので並行して作業を進め、結果として豆乳の中にある発酵を促進させる成分が予想以上に少なかったことが原因であるとわかったのです。
すぐに工場のメンバーと話し合い、豆乳自体を製造する条件を改良することで解決することができました。

「SOYBIO」を迷わず選んでもらえる存在に


直前までトラブル続きでしたので、無事に出荷でき、店頭で商品を見かけた時は嬉しさと安堵の気持ちでいっぱいでした。これまでポッカサッポロの商品が大型ヨーグルトの棚に並ぶことがなかったので、新しくデビューできたことで喜びもひとしおでしたね。私自身も、この開発を通して成長できたな、一皮むけたな、と実感することができました。

豆乳ヨーグルトのような植物性食品は、最近はカフェのメニューになったり、大豆ミートを使った商品が増えたりと、より注目されてきています。その中で多くのお客様に「SOYBIO」を迷わず選んでいただくためには、「SOYBIO」をもっとパワーアップさせて存在感を大きくしていかないと。
開発の立場として中身を魅力的にしていくことはもちろんですが、事業部全体で成長させていけるように取り組んでいきたいです。
 
今回の開発を通して、新しいことに挑戦する楽しさを学びました。現在もさまざまな商品開発に携わっていますが、今後さらに植物性ヨーグルトや食品市場を盛り上げられるようなことを考えていきたいですね。


お客様においしいと思っていただける豆乳ヨーグルトを作りたい。その一心でトラブルを乗り越えながら開発していった「SOYBIO」。失敗さえも面白いと受けとめることができる、浅井さんの前向きな姿勢が印象的でした。

次回は豆乳ヨーグルトのための自社一貫製造工場の立ち上げから、前例がない難しさや困難に立ち向かった日々についてお届けします。

写真左は2022年現在のパッケージ、写真右は2019年発売当時のパッケージ


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