スパイスから味わいを組み立てる異次元の挑戦【SPICE FACTORY クラフトエナジーN1誕生秘話】
2023年3月、スパイス(*)を使ったノンカフェインの自然派エナジードリンク「SPICE FACTORY クラフトエナジーN1(以下、クラフトエナジーN1)」を発売しました。
「SPICE FACTORY」は、スパイス×飲料による新しいおいしさと健康感を楽しんでいただくブランド。
ポッカサッポロの飲料開発ノウハウに、グループ会社であるヤスマ株式会社(以下、ヤスマ社)のスパイスの品質・専門性・知見を取り入れ、フラッグシップ商品として発売したのが、「クラフトエナジーN1」です。
複数のスパイス(*)を使ったエナジードリンクの開発は「苦労の連続だった」と語るのは、ブランド担当の眞島さん、研究開発担当の丹下さんです。この挑戦にいたった経緯や開発の裏側、「クラフトエナジーN1」の魅力について、お二人に話を聞きました。
(*)エキス使用
スパイスの組み合わせによる新しいおいしさと健康感を届けたい
ーーまず、「SPICE FACTORY」ブランドの開発をスタートすることになったきっかけについて、教えてください。
眞島:2019年頃から、スパイス専門店やクラフトコーラが登場し、スパイスに注目する人が増えたことです。それ以前は、ジンジャーエールなどスパイスの要素がある飲み物はありましたが、複数のスパイスを組み合わせたものは多くはありませんでした。クラフトコーラに出会った時、「スパイスでコーラができるんだ」という新しさと発見や驚き、健康的なおいしさに魅力を感じ、スパイスで作る飲料に可能性を感じました。スパイスはちょっとの配合で味や印象が変わります。その分、バリエーションが広がり、新しいおいしさを提供できるのではないかと考えました。
また、同年に70年以上続く老舗のスパイスメーカーであるヤスマ社が私たちのグループ会社となったこともきっかけのひとつになりました。ヤスマ社の調達力や品質管理、スパイスに関する知見の深さと、私たちポッカサッポロが持つ飲料開発ノウハウの掛け合わせることで、より多くのお客様にスパイスのおいしさと健康感を感じてもらいたい。そんな思いでスパイスを使った飲料開発をスタートすることにしました。
ーー丹下さんは開発に携わることになったとき、どんな思いがありましたか。
丹下:眞島さんからもあったように、スパイスはさじ加減ひとつで味が変わるほか、印象も大きく変わってしまいます。そのため、「なかなか難しい領域にチャレンジすることになるんだな、しっかり勉強しなければ」と思いました。
私は薬学部を卒業していて、薬剤師免許を持っています。スパイスは生薬に通ずるところも多いので、今回の飲料開発を通じてお客様の健康をフォローアップできるかもしれないというやりがいも感じましたね。
ーースパイスを使った飲料は他にも考えられたと思いますが、エナジードリンクを開発するにいたった背景を教えてください。
眞島:当社のキレートレモンやマカの元気ドリンクが分類されている栄養ドリンク市場をウォッチする中で、それまで右肩上がりで成長していたエナジードリンクが踊り場感にあることが気になりました。実際にエナジードリンクユーザーの声を聞き、要因を分析してみると、健康志向を受け、エナジードリンクの「糖分、人工的な味や成分」に対する不満や体に良くない罪悪感から習慣化しないようにし、購入頻度やリピートが増えていないことがわかりました。
また、エナジードリンクに期待することとして、疲労回復やリフレッシュなど、自分のパフォーマンスが上がることに期待する声が多かった一方で、カフェインに期待する声があまり多くなかったことが印象的でした。「人工甘味料不使用」や「自然素材の活用」など、身体によい・安全性の高い商品を求める声が多かったんです。
さらに、エナジードリンク先進国であるアメリカでも、近年はウェルネスニーズが高まっており、植物性素材のヘルシーなエナジードリンクが登場していることも注目したポイントです。
そうしたさまざまな背景を踏まえ、「エナジードリンクの未充足ニーズを満たし、罪悪感なく本数を増やせる、日常使いできるエナジードリンクをお届けできたら、お役立ちできるのではないか」と考え、スパイスを活用した自然派エナジードリンクを開発することに決めました。
丹下:自分自身がどんなときにエナジードリンクを飲むかと考えてみると……、確かに「カフェインだけを求めて飲んでいるわけではない」とは考えていましたが、眞島さんから商品のコンセプトを伺った際は、ノンカフェインでかつ自然素材を使ってどうやってエナジードリンク感を出していけばいいのか、最初はなかなかイメージできませんでしたね。
世の中に存在しない飲料開発という挑戦。約2年を要した「クラフトエナジーN1」開発の試作は130回に及んだ
ーー実際に開発がスタートしてからはどんなところに苦労しましたか。
眞島:世の中に複数のスパイスが入った飲料が存在しないため、ゼロから自分たちで作っていかなければなりませんでした。とにかく商品設計や味の配合が大変でしたね。
丹下:当初はカレー以外スパイスについて知らない状態だったので、スパイス専門店に足を運んでスパイスに関する知見を深めました。店員さんに「このスパイスはどんな味がするんですか?」「同じ名前が入っているのに2種類あるのはなぜですか?」などと気になることを質問し教えていただくこともありました。
眞島:丹下さんとヤスマ社に何度も訪問させていただきましたね。ヤスマ社に直接アドバイスをいただきながら、実際に目と鼻と舌でいろんなスパイスを確認しました。
味を担保しながら、エナジードリンクへ期待される要素も満たさなくてはいけない。それだけでなく、スパイスにまつわるストーリーやエピソードも含めてすべて繋がっていないと、商品として成立しません。こういったスパイスに関する知見はポッカサッポロにはないので、スパイスの専門家であるヤスマ社の知見は不可欠でした。
スパイスはたくさん種類があるし、ブレンドの際のさじ加減で味わいが全く変わってしまうので、ヤスマ社からのスパイスの情報を受け、商品の開発時にはかなりの数の試作を重ねました。丹下さんは相当苦労されたと思います(笑)。
眞島:食用のスパイスを飲料に使うためにはエキス化する必要があるのですが、エキス化する際のブレンドや加える香料の選定といった工程で実に130回もの試作を約2年にわたって繰り返しています。「SPICE FACTORY」ではベースとして8種のスパイスを使っているのですが、このベースを作り上げるところから大変でしたね。
丹下:香料だけではスパイスの香りまでしか表現しきれず、スパイスの魅力を最大限に伝えていきたい「SPICE FACTORY」としては、食品素材としてエキス化したスパイスを組み合わせることで、スパイスの風香味にこだわって味づくりをしていました。
単純にスパイスをエキス化・香料化すればいいということではなく、飲料としておいしくするための工夫も必要です。どういう処理を施すのが最適なのかをその都度原料パートナーとも相談しながら手探りで進めていきました。
また、同じエキス・香料を作るにしても抽出方法によって味が異なるので、「このタイプとこのタイプ、どちらにしますか?」といったことはもちろん、「香り的にはこちらを大事にしたいけど、味はこっちに寄せて」という細かい調整もありました。すべてにおいてイチから積み上げていかなければならなかったので、そういった点では苦労しましたね。
眞島:スパイスも、先に香りがくるものもあれば中盤から効いてくるもの、後半からのものいった具合にそれぞれに特徴があるんですよね。こっちのスパイスを強くしたら、別のスパイスの香りが消えてしまったという具合にスパイス同士の相性も考慮しなければなりませんでした。そうした点を踏まえて、最初の飲みはじめから最後の飲み終わりまで、どういったバランスで味を組み立てるかというところは開発担当者と本当に悩みながら試行錯誤しました。
丹下:スパイス同士の相性があって、香り同士がケンカをすることもありました。ただ足し算をすればいいわけではなく、特定の香りをたたせるためには引き算や掛け算をしなければならない場面も多かったですね。フレーバリストの方と直接やりとりしながら、かなりこだわって調整しました。何度も調整していた分時間もかかっていたので、本当に間に合うのか不安に感じることもありました。
ーー完成したときはどんな気持ちでしたか。
丹下:率直に「やっとできた……!」といったところでしょうか。開発期間が長期にわたったこともあり、他の商品よりも達成感や安堵感も大きかったです。
いつもは愛知県の研究所で勤務していて、眞島さんは東京都の本社で勤務しているので、味やイメージを共有するのが大変でしたね。行き来したり電話を頻繁にかけたりと密に連絡は取っていたので、コミュニケーションは取れていたものの、味をその場で確認することはなかなかできなくて……。それもあって、イメージ通りの飲料ができたときは喜びもひとしおでした。
エナジードリンクに頼る時に少し後ろめたさを感じる人にこそ飲んでほしい【SPICE FACTORY クラフトエナジーN1】
ーー商品名である「クラフトエナジーN1」はどんな思いを込めて名付けたのでしょうか。
眞島:自然派エナジードリンクという新しいカテゴリーを生み出そうとしていることもあり、自然派のナチュラリズム(Naturalism)と自然派エナジードリンクとしての「No.1」をかけて名付けました。
ーードリンクに印字されているロゴも印象的ですよね。
眞島:「SPICE FACTORY」のロゴには、「SPICE FACTORY」のベースとなる8種のスパイスがデザインであしらわれています。
ーー「クラフトエナジーN1」で使用しているスパイスについてもうかがいたいです。
眞島:キースパイスとして、ガランガルを使用しています。
エナジードリンクに期待される要素や成分の代替イメージについて、ヤスマ社にも相談しました。沢山あるスパイスの中から特長や風香味を吟味し、シナモン・ナツメグ・カルダモン・クローブ・クミン・オレガノ・ガーリック・陳皮といった計9種を厳選しています。
当社オリジナルのスパイスエキスに仕立て、活力素材である「マカ」のエキスを配合しています。
ーー「クラフトエナジーN1」の推しポイントをぜひ教えてください。
丹下:開発にあたり、おいしさや飲みやすさにはかなりこだわりました。クセが強くてごく一部の限られたユーザーにしか受け入れられない味ではなく、幅広い方に楽しんでいただける味に仕上がったのではないかと思います。
ーーどんな人たちに飲んでいただきたいと思っていますか。
眞島:まずは現在エナジードリンクを飲んでいる人に飲んでほしいですね。特にカフェインの1日あたりの摂取量を気にされている方には、カフェインを気にせずに飲んでいただけるので、日頃飲んでいるエナジードリンクと併用して飲んでいただけると嬉しいですね。また、健康を意識して、エナジードリンクを控えている人にも再チャレンジのきっかけになればと思います。
自然派のエナジードリンクなので安心して飲んでいただけるほか、飲む頻度やシーンを広げられるのが「クラフトエナジーN1」です。なので、今までエナジードリンクにトライしてこなかった人や、カフェインが入っているから飲めなかった人にもチャレンジしていただきたいですね。
ーーちなみに、お二人はどんなシーンで「クラフトエナジーN1」を飲んでいるのでしょうか。
眞島:私は仕事中に飲むことが多いですね。「これから会議だ」と気持ちを引き締めたいときなどに飲んでいますね。
丹下:私は朝が苦手なので、朝イチで飲むことが多いです。特に、私生活と仕事の切り替えをしたいときに飲んでいます。香りもしばらく口の中に残ってくれるので、その余韻も楽しんでいます。
ーー最後に、「SPICE FACTORY」の今後の展望についても教えてください。
眞島:スパイスにはまだまだ無限の可能性があると考えています。今回はエナジードリンクでしたが、より健康感を感じていただけるようなブランドとして展開していきたいと思っています。
今回発売した「クラフトエナジーN1」は、「SPICE to ENERGY」を掲げていますが、今後は「SPICE to REFRESH」「SPICE to ACTIVE」などさまざまな価値を提供できたらと考えています。
新しいカテゴリーを創ろうとしているのでお客さまに受け入れてもらえるかどうか、今は不安な気持ちでいっぱいですが新しい市場ができていくことへの期待も大きいです。ひとりでも多くの人に愛してもらって、定着させていきたいと思います。