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発売から65年。おいしさへの進化を繰り返してきた、飽くなき“こだわり”を探る【ポッカレモン100】

「ポッカレモン」が発売されたのは1957年。当時レモンはとても高価な果物でした。そこで、旧ポッカコーポレーションの創業者・谷田利景の「生レモンの代わりに気軽に使えるレモンを」という考えのもと開発へと動き出したのですが、レモンは味が変化しやすく、周囲からも商品化は絶対無理といわれるほど。試行錯誤の末、瓶入りの合成レモンを発売したのが「ポッカレモン」の始まりでした。
 
1972年には果汁100%の「ポッカレモン100」となり、2022年2月に65周年を迎えることができました。
ロングセラーブランドとして成長しつづけた65年、どんな苦労や開発へのこだわりがあったのか、そして「ポッカレモン100のこれから」について山口さんに話を聞きました。

山口 研志
ポッカサッポロフード&ビバレッジ株式会社 レモン・プランツミルク事業本部 レモン・プランツミルク研究所 オールレモン開発グループ グループリーダー
1997年入社。現在は、レモン商品の開発をはじめ、飲料や加工食品の原料素材開発、国内外の加工拠点開発のマネジメントを行っている。

100%ならではの原料果汁へのこだわり

「ポッカレモン100」は、果汁と香料だけのシンプルな商品。だからこそ果汁の種類にもこだわっています
 
レモンの原料果汁はパルプ(レモンの房の袋や果肉にある小さなつぶつぶを細かくくだいたもの)がどのくらい含まれているかによって大きく3つの種類に分けられます。
 
パルプが多く含まれ濁っているのが「混濁果汁」で、コクや香りが強く、レモンの存在感が強いのが特徴です。逆に、パルプを完全に取り除いた透明な「クリア果汁」は、すっきりした味わいになっています。クセのない味わいなので、飲料や缶チューハイなどのお酒に「クリア果汁」が多く使われています。
 
「ポッカレモン100」は、料理やお菓子、飲み物まで幅広く使っていただけるよう、「混濁果汁」と「クリア果汁」の良いところをあわせ持った、ほどよいコクのある「セミクリア果汁」を使っています。

果汁は海外にある栽培地で収穫した後、搾汁して日本に運ばれますが、時には思いも寄らない事態に遭遇することもありました。

写真左から「混濁果汁」「セミクリア果汁」「クリア果汁」


緊張感が走った、原料調達の予期せぬ事態

「ポッカレモン100」の果汁原料のレモン果実の年間調達量は2億1000万個分ほど(2020年時点)になりますが、常に安定した品質で供給が行えるよう、北半球と南半球それぞれからバランスよく調達しています

 果汁は現地で搾汁・濃縮し、おいしさを保つために冷凍して日本に運ばれますが、調達や運搬の際に想定外のトラブルが発生することも。2021年3月に起こったスエズ運河の座礁事故では、果汁原料の輸送が止まってしまうかもしれない……という事態に陥りました。私はレモンの原料素材開発を行っていたため、調達部から「品質は変えずに、原料不足に対応する術はないか」と相談があったんです。

「ポッカレモン100」は会社にとっても大事な商品なので、何とかしなければ……という想いで急ぎ検討を進めました。結果的に座礁は早々に改善されたので大事に至らずに済み、その時はほっと安堵しました。

 また、最近では、コロナの影響で輸送時のコンテナの確保が難航したり、調達についても世界的な異常気象や天候不順のリスクもあるので、国際情勢だけでなく、世界の気象状況にまで常に目を向けるようにしています


製法へのこだわり─レモンの敵は「酸素」と「熱」

「ポッカレモン100」は、おいしい状態でお客様にお届けするために、1988年から保存料無添加になりました。できるだけ余分なものは入れず、果汁と香料だけのシンプルな商品だからこそ、製法にもこだわっています。
 
特にレモンは変化が早いという大きな課題があります。たとえばリンゴであれば、時間が経つと色が茶色くなることをお客様も知っていますが、レモンの場合はそうはいきません。変化しやすいということがお客様に伝わっていないため、商品への信頼や期待を損なわない品質でなければならないのです。
 
レモンを劣化させる要因として、空気に含まれる「酸素」による酸化と「熱」による色調の変化があげられます。そこで「ポッカレモン100」では、酸素を抜く調合や熱劣化が少ない液殺菌方法を組み合わせた製法を取り入れました。
 
また、保存料無添加のため、開封後は品質を保つために冷蔵庫で保管してくださいと、この機会にお客様にもお伝えしたいですね。


細部にまで工夫を凝らしたパッケージ

実は、酸素と熱以外に、レモンを劣化させるもうひとつの敵に「光」があります。「ポッカレモン100」が遮光性のある緑色の瓶を使っているのは、光によって中身の色が変わることを防ぐためなんです。
 
また、酸素を通さず、レモンの香りを逃げにくくするため、瓶タイプでは中栓にアルミシールを貼り、70mlのプラスチックタイプは多層ボトルを採用しています。この他にも、開けやすいキャップの形状や使用した後の半開きを防ぐためのパチッと音の出る工夫など、パッケージは細かいところにまでこだわりが詰まっているんです


守るべきもの、変えていきたいもの

私が入社した1997年当時は、「ポッカレモン100」は紅茶に入れたり、お酢の代わりにつかわれることがほとんどで、売上もずっと少なかったのですが、お酒専用や飲み物専用などの種類やサイズ展開を増やすなど、多くのお客様に使っていただけるよう商品との接点を増やすという地道な活動が実って、ここまで成長できたことは改めて感慨深いですね。
 
これから新しいチャレンジもしていきたいです。さらにいろんな用途やシーンで使えるように、容器やサイズのバリエーションを増やしていきたい。
たとえば、レモンを使う場面にはお弁当やキャンプなどのシーンがありますが、そういったときに手軽に持ち運べる個包装のものがあるといいですよね。中身も、液体でなく粉末とかがあってもいい。
容器も、ガラス瓶だと重かったり、捨てられる日が限られるので、軽い容器や捨てやすい容器など考えていきたいですね。もちろん、全部を一気に変えるのは難しいので、まずはできることから模索していきます。
 
「ポッカレモン100」の安全・安心へのこだわり、レモン本来のおいしさを届けるため、果汁100%で保存料無添加であることは大事に守りながら、新しいことも取り入れていく、その両方を追い求めていきます。


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